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新機関
EU加盟にあたって必要なアルコール政策における全ての変更事項を規定するため、新アルコール法(Alcohol Act)が1995年1月1日付けで発効した。前述のように、輸入・輸出・製造・卸売りの独占は廃止された。これに代わって許可書発行と査察の制度が整えられた。これを担当するのが、新たに設立された機関である国家アルコール委員会(the National Alcohol Board)である。
同委員会は以下のような作業を担当する。

 

*蒸留酒、ワイン、高アルコール濃度ビールの製造、卸売りに対する許可書の発行
*郡の行政機関や地方自治体との協力によるアルコール取引の監督
*新制度の効果を調査・評価するための統計の収集

 

今日約200の個人・企業が卸売りの許可書を取得しており、アルコール飲料を購入・輸入し、小売り専売公社へあるいは直接飲食店へ販売することができる。

 

自由販売と価格引き下げの影響予測
1993年、ハロルドホルダー博士(Dr.Harold Holder)率いる海外研究者グループは、価格引き下げと、高アノレコール濃度ビール、ワイン、蒸留酒の食料品店での販売が、アルコール消費とアルコール関連問題に及ぼす影響を予測し、報告書をまとめた(ホルダー他、1993)。フィンランドやノルウェーでも類似の研究が行われ、同様の結果が出ている。
価格引き下げとアルコール小売り専売公社の将来によって、消費量は(15歳以上の国民1人当たり100%アルコール換算で)1〜5リットル、アルコールに起因する死亡は600〜4,000件、暴行は3,000〜22,000件の範囲で増加すると推定される(図2)。
小売り専売公社が存続し、価格はデンマーク価格まで下がるいうパターンが1つ考えられる。この場合、死亡は約1,000件、暴行は5,000件増えると推定される。
研究者は、この推定は控えめに見積もったもので、計算値は最低の場合として考えるよう強調した。

 

国家行動計画
1994年秋、長期計画策定を主な任務とする国家運営委員会(National Steering Group)が設立され、アルコール関連障害と麻薬中毒を防止する具体的な行動計画を提示した。この計画は、1995年6月にスウェーデン政府の手に委ねられた。
ホルダーら(1993)の推計は、今後の予測とはみなされなかった。これは「他の全ての状況が変わらない」すなわち、懸念されているアルコールによる障害の増加に対して何の対応策もとられなければ、という仮定の下での評価であった。このため委員会は、国民のイニシアチブの高まりが長期間続くことが必要だと力説した。

 

 

 

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